『ドリアン・グレイ 美しき肖像』(マッシモ・ダラマーノ監督 1970)のDVDはそのうち買おうと思っていたらいつの間にかネット上では高値になってしまって、普通の値段では全然見つからず、販売元が紀伊國屋書店なのでどこかの店舗に在庫が残ってないか問い合わせてみたら在庫があり、なんとか手に入った。
これは文芸映画というよりはポルノまがいのB級コメディだ。貶しているのではなく褒めている。かなり真面目に作られているはずだが、どこか変で下ネタが笑える。イギリス、イタリア、西ドイツ合作でスタッフやキャストは必ずしもイギリス人ではないが、馬鹿馬鹿しさの中にも気品が感じられるのはさすがイギリス。1970年の映画で厳密にはスウィンギン・ロンドンの時代より少し後ではあるが、近い時代なのでファッションなどにその雰囲気が感じられる。
ヘルムート・バーガーは顔が綺麗というだけではなく、『ルートヴィヒ』のルートヴィヒ二世や『サロン・キティ』のナチス将校といったイッちゃってる人物が似合うのでドリアン・グレイ役にぴったりだ。解説に載っている助監督の談話によると、ヘルムート・バーガーはルキノ・ヴィスコンティ監督の真剣勝負の現場で様々なことを学んだ並はずれた俳優で、決してミスを犯さずドリアン役を自家薬籠中のものにしていたとのことだ。
ドリアンは最初はベルベットのスリーピースを着ていて、結構派手だが一応普通の形の服だ。これがドリアンが堕落していくに従って服もどんどん奇抜になっていく。ファッションで真似できそうなのは、作中での存在も地味な画家のバジル・ホールワードだろうか。モーヴのハイネックが欲しいものだが、メンズは売ってなさそうだ。
ヘンリー・ウォットン役のハーバート・ロムがいい。外見はもう少しスマートな方が私の好みだが、目力があって話し方の雰囲気もいい感じだった。記事「『オペラ座の怪人』(1962) ハマー・フィルムのスパルタ・ファントム」に書いた『オペラ座の怪人』(テレンス・フィッシャー監督 1962)のファントム役もハーバート・ロムであることを知り、また見たくなった。
下の三人は特に共通点があるわけではないのだが、ギョロッとした目でいやらしい雰囲気のイギリス紳士で多分同じ民族なんじゃないかな。
シャワールームでドリアンと・・・のヘンリー役ハーバート・ロム