ティム・バートン監督の映画で好きな作品もあるが、ここ数年は大人になってしまって狂った感じのないつまらない映画ばかりなので観ていなかった。最近、『フランケンシュタイン』に凝っているので『フランケンウィニー』(2012)を見てみたら、しょうもない駄作だった。登場人物がみなおかしいから主人公が普通に見える。短篇『フランケンウィニー』(1984)は甘いところもあるが、まあ悪くない。だが、長編を撮ったときのインタビューを読むと、監督が好きなように作ったようで、それでこの出来ならしょうがないねと思った。好きなように作れた方が監督にとっては幸せだ。
ティム・バートン:『フランケンウィニー』は、わたしにとって最も私的な作品だ
そこでまた見たくなったのが『シザーハンズ』(1990)だ。VHSを持っていたくらい好きだったが、しばらく見ていなかった。
テレビ出演で恋人について聞かれたエドワードが何も云わないのがいい。終盤の夜のシーン、エドワードが町の人々に追われるところで、ヒロインのキムが大きな瞳でエドワードを見つめて何か云う前の間の表情がいい。何を云うのだろう、エドワードはキムにまで誤解されてしまったのだろうかと思わせておいてあの台詞だ。感動した。
人造人間が女を求めるところも、子供を救おうとしたのに襲っていると勘違いされて迫害されるのも、語りによる入れ子構造もメアリー・シェリーの原作『フランケンシュタイン』にある要素だ。発明家の怪奇な古城で一番目立つのが何故クッキーを焼く機械なのかというナンセンスなところもいい。発明家役のヴィンセント・プライスの出演シーンは多くないが、人造人間エドワードにマナーを教えたり詩を読んだりするところが品があってよい。
どんなに共感しようとも、やはりエドワードは殺人者だ。安易なハッピーエンドにならないところがいい。愛する者を守るために殺人を犯す。だが殺意はなく、腕を前に出したら相手が死んでしまったとも思える。そして身を引く。久しぶりに見たが、やはりいい。