「日本で巴里の気質を持っているのは浅草人だけである」と、森茉莉は書いている(『ベスト・オブ・ドッキリチャンネル』 ちくま文庫)。最近の記事でパリや浅草のことを書いていたので、こんなところでつながるとは意外だった。
浅草の歴史は江戸よりも古い。行政の中心であったためしはなく、浅草寺を中心とした観光の町、見世物、浅草オペラ、活動写真、レビューなどの興行、浅草公園、吉原遊郭を中心とした歓楽の町であった。モンマルトルを思わせるものがある。
先の森茉莉の文章に、「巴里の八百屋や乾物屋は、休みの日に楽しく遊ぶために働いているのであって、働くために働いているのではない」とある。私はまったくその通りだと思う。悪口もドッキリチャンネルくらいになると芸術で、気に喰わないものについてケチョンケチョンに書いてあるものを読むのは爽快だ。
どこかに私の好きなものについての悪口が書いてあっても別に腹は立たない。そのよさを自分は分かっているから。それより、頭のおかしい奴に褒められる方が嫌だ。