『キング・コング』 女を追っかけまわして大暴れして散った巨大猿

キング・コング

乱暴に云ってしまえば、『オペラ座の怪人』『キング・コング』も同じ話だ。過去の記事に『ファウスト』『オペラ座の怪人』『ジキル博士とハイド氏』も欲望、特殊能力や変身、失敗が描かれていて、多くの人が共感しやすいのだろうと書いたが、それらの複雑な感情や文化的な事柄を全部捨ててエゴまるだしにすると『キング・コング』になる。

1933年のオリジナルが素晴らしかったので、ピーター・ジャクソン監督版も見てみた。オリジナル礼讃というわけではないが、オリジナルはジャングルの木々の向こうに恐竜が見えるところ、コングがアンを木の上に置いてからティラノサウスルと戦うところがよかった。巨大生物の数を増やせばいいというものではない。ドリスコルがアンを助けに来て崖からツタにつかまって逃げようとするところの間やサスペンスはオリジナルの方が上だ。虫いらないから、ここをもっと丁寧に描いて欲しかった。ピーター・ジャクソン監督版は、ニューヨークのシーンがよかった。

『キング・コング』には美女と野獣、騎士道のテーマがある。騎士道は君主の奥方に恋し、命を懸けたりするもので、相手にパートナーがいるかいないかとか、つきあえる可能性があるかないか等で行動を決めるのは全くくだらないことだ。アンは林檎を盗むイヴであり、関わる者に死をもたらすファム・ファタールでもある。シンプルなストーリーに深読みできる要素が隠されているとも云えるし、中身のない馬鹿馬鹿しいものとも云える。面白いので、これからも他のリメイクを見たり、文献を読んでいきたい。

1977年の雑誌、季刊映画宝庫、創刊号責任編集双葉十三郎のキング・コング特集は、ものすごく充実している。昭和初期の映画館の写真や広告、ポスター等も載っている。ピーター・ジャクソン監督版のときの記事はスターログ日本版27号に載っている。

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