漫画『東京物語』 ふくやまけいこ

東京物語 ふくやまけいこ

『東京物語』ふくやまけいこ ハヤカワ文庫)を再読した。絵はかわいいが、ミステリアスで結構壮大な話だ。

昭和初期の東京、雑誌記者の平介と謎の風来坊の草二郎が色々な謎を解き明かしていく話だ。平介と草二郎の友情や、草二郎と蕎麦屋のフミちゃんの恋愛要素は極々あっさりで、そのあっさりが少しづつ積み重なってラストへ向かって行くところがよい。

舞台となる街は上野、浅草、銀座、谷中など。他に映画関連で横浜、草二郎の過去に関して中国が出てくる。からくり、サーカス団の双子、人魚、活動写真、飛行船、謎の組織等などと、レトロで怪しい雰囲気がよい。

震災後なので十二階は壊れた後なのだが、偽物の昭和凌雲閣というものが出てくる。そこで、「”十二階”ですね」、「正しくは”凌雲閣”って言うんだぜぇ」という会話があり、私もそのように思っていた。だが、『浅草十二階 塔の眺めと〈近代〉のまなざし』細馬宏通 青土社)によると、明治23年に出来た「凌雲閣」は、わずか二年後に通称だった「十二階」が正式名称になったのだそうだ。明治大正の33年間建っていた十二階。歴史の中で見れば短い間だが、33年といえば結構長い。この塔についても調べていくと面白そうだ。

細馬宏通氏のサイト
浅草十二階計画

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