『真説フランケンシュタイン 北極に消えた怪奇人間』(ジャック・スマイト監督 1973)は『悪魔のはらわた』(ポール・モリセイ監督 1974)と制作時期が近い。人造人間が美しいところ、男女の人造人間が造られるところが共通している。そして『ロッキー・ホラー・ショー』(ジム・シャーマン監督 1975)の少し前で、水槽にカラフルな液体を入れるところ、人造人間が高いところに登るところが共通している。
フランケンシュタインはセミロングの髪型がかっこよく知的な目をしているが割と普通の人で、マッド・サイエンティスト的な役割は別の人物になっている。雷ではなく太陽の力で人造人間を作る技術面に情熱を燃やすヘンリー・クラーヴァルと、一応外科医らしいけど何か怪しい催眠術使いで権力欲が強いジョン・ポリドリだ。ヘンリー・クラーヴァルという名前の人物は原作にも出てくるが、『真説フランケンシュタイン 北極に消えた怪奇人間』は原作とは全然別の話で、クラーヴァルも全然違う。クラーヴァルは心臓の持病で死に、フランケンシュタインが研究を引き継ぐ。ジョン・ポリドリと云えばメアリー・シェリーの原作『フランケンシュタイン』が書かれるきっかけとなったディオダディ荘の怪奇談義に参加したバイロン卿の主治医と同じ名前だが、特に深い意味はなく、名前を借りただけのようだ。
男性の人造人間は最初は美しいが、段々醜くなっていく。悪くはないが、あっさり風味でいまいち盛り上がらず、登場人物は何がやりたいのかよく分からない感じで進んでいく。後半に出てくる女性の人造人間が美しく、創造の映像も美しい。
女性人造人間の社交界デビューの舞踏会に醜く変貌した男性人造人間が現れ阿鼻叫喚とか、嵐の船上で雷を怖れるポリドリの最期とか、フランケンシュタイン映画には珍しくフランケンシュタインが怪物に許しを乞い、和解しそうなところで起こる自然現象とか、笑うところではないのに派手すぎて笑ってしまう。184分の長尺で、すごく面白いというわけでもなく、悲哀があるわけでもないが、変な人物が結構出てきて楽しめた。