『女王陛下の007』 レトロでポップなムードもありハード路線の悲哀もありの二代目ボンド

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『007/スペクター』サム・メンデス監督 2015)は悪くはなかった。ボンド・ガール、マドレーヌ役のレア・セドゥがただならぬの雰囲気でよかった。終盤の展開に無理があるが、迫力のあるアクションを大画面で見られることに意義がある。

007のDVDは何枚か持っていたが、レンタルにあるので持っていなくてもいいかと思い、売ってしまった。唯一、売らなかったのが『女王陛下の007』ピーター・ハント監督 1969)だ。『007/スペクター』を観た直後に、こちらも見たくなって、見た。やはり雪山に行ったらスキーでチェイスしなければ。

『女王陛下の007』の挿入歌、ルイ・アームストロング“We Have All The Time In The World”「愛はすべてを越えて」がとてもよい。作曲は「ジェームズ・ボンドのテーマ」のジョン・バリーだ。007らしからぬピースフルなラヴソングで、印象に残っていた。

ボンドは偽名を使って変装して組織に潜入する。最近のボンドはスパイなのにすぐ本名を云う。どうせバレるからと『カジノ・ロワイヤル』で云っていたが、変装して潜入という怪しさは好きだ。美女軍団も出てくるし、悪役のやることにスケールの大きな馬鹿馬鹿しさがある。そして悲劇的な結末。“We Have All The Time In The World”のインストゥルメンタルが涙を誘う。

『女王陛下の007』には『カジノ・ロワイヤル』にあった女のための辞職があり、『007/スペクター』にあった父と娘の関係がある。『007/スペクター』の終盤を見ていて、この女絶対裏切るか殺されるかでしょと思いながら見ていたが、どちらでもなかった。続きは次回作ということだろう。

解説本には『女王陛下の007』はヒットしなかったとか、主演のジョージ・レーゼンビーは天狗になったとか書かれているが、調べてみるとそれらの噂とは違った側面が見える。

007おしゃべり箱 Talking BOX of 007 Vol.28 『ジョージ・レーゼンビー 考』
ジョージ・レーゼンビー論~本物のボンドとは~

演技経験がないのに急に持ち上げられたことによる葛藤、演技経験がないからこそジェームズ・ボンドに同一化しすぎたこと。ラストシーン、原作を読んで泣いたジョージ・レーゼンビーは涙を流す演技をしたが、監督は「ジェームズ・ボンドは泣きはしない!」とNGにした。私は泣いていたように記憶していた。見直してみると、確かに涙は見せていない。が、ほんの少し嗚咽がもれるのだ。

いい映画だ。私が『女王陛下の007』を売らなかったのは正解だった。

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コメント

  1. 紅真吾 より:

    ブラッケン・ダーキン殿
    はじめまして、紅真吾です。
    拙著Vol.28『ジョージ・レーゼンビー 考』を取り上げて頂きまして、ありがとうございます。

    また、添付されている写真には感激しました。 そうです、このトレーシーです。 小生がVol.6『ボンド・ガール』で言いたかったのは。
    とっても可愛い。 たまりましぇ~ん。

    しかしまた、貴殿はヤケにディープな世界にお住まいですね。
    高校生の時、ガール・フレンドが「ドリアン・グレイの肖像」を貸してくれましたが、「うへェ~」でありました。
    ちなみに彼女は、ちゃんとした昼間の住人でした。

    ところで、生島治朗氏の「ハードボイルド風に生きてみないか」を記事に取り上げていらっしゃいますね。
    ホントはお好きなンじゃないですか? ハードボイルド。
    旦那、ダンナ、かっこ付けて「夜の国の住人」なんておっしゃってますが、ハードボイルドの世界にお引越しなさってはいかがですかな。 

  2. Blacken Darkin より:

    はじめまして。コメントありがとうございます。

    オールド上海に凝っているので『黄土の奔流』は読み、大変感銘を受けました。
    ハードボイルドに興味はあるのですが、あまり詳しくなくて、これから読んでいきたいです。

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