マーティン・スコセッシ監督の『ヒューゴの不思議な発明』は最高の映画ではないかもしれないが、作品世界が最高に私の好みの映画だ。1930年代、パリ、時計、歯車、機械人形、奇術、汽車、カフェ、古書店(本好きの少女)、映画(映画好きの少年)、眠って見る夢、等など、どうでもいい要素は全くない。レンチの形まで凝っている。この世界に3Dで没入できるだけでも価値がある。
『ヒューゴの不思議な発明 公式ガイドブック』は安っぽいタイトルだが日本で編集したものではなく、原作者ブライアン・セルズニックの著書なのだ。厚くて写真や絵や読み物が充実している。
ブライアン・セルズニックがインスピレーションを受けた本『エジソンのイヴたち』は『生きている人形』(ゲイビー・ウッド 青土社)というタイトルで邦訳が出ている。私も持っている。
『シネマの誕生物語 魔術師と映画』(エリック・バーナウ ありな書房)もこの辺と関係ある本だが、あまり出回っていないようだ。
《追記》
原作『ユゴーの不思議な発明』を読み、『ヒューゴの不思議な発明』を改めて見てみると、最初に観たときよりも感動した。雪の季節なので映画の雪景色を思い出し、原作が読みたくなり、読んだらまた映画を見たくなったのだ。
映画の中のジョルジュ・メリエスや駅の公安官は最後まで見れば歪んだ原因が分かり、ハッピーエンドになっているが、第一印象は非道すぎ!だった。原作の要素を違う使い方をしているところ、変えているところ、付け足しているところも効果的だ。本を映画化して本より面白くなることは少ないが、これは珍しい成功例だ。
原作がいまいちという意味ではなく、映画に出てこない人物がいたり、映画では説明されていないメリエス夫妻とイザベルの関係、映画アカデミーにある絵の意味、最後にヒューゴがマジックをしている理由なども書いてあり、読むと映画がより楽しめる。
映画の最後の方のメリエスの挨拶で、ある勇敢な若者が壊れた機械と向き合い、大きな困難を乗り越え修理したと話すところにもうひとつの意味が込められてることに気付き、泣きそうになった。今までは私の好きなものがたくさん出てくるから作品世界が好みの映画ではあるけど内容はまあまあだと思っていたが、これはもう本当に好きな映画になった。
また3Dで見たいなー。3D環境がまだない。
(2017年12月26日)
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