浅草に凝っていた時期に高見順の『如何なる星の下に』を読み、『いやな感じ』にも興味を持ったが古本が高値なので買わずにいた。これが復刊されていたので買って読み始めたら圧倒されて一気に読み終わった。エンターテインメントとして面白い。綺麗事じゃない話、単純じゃない話というのは好きだね。
この狂った世の中で「生の拡充」を希求するテロリストの大冒険、玉ノ井の私娼窟の夜、京城での暗殺未遂、根室で潜伏、一発当てに上海へ、往きて還りし物語ならぬ行って行ってイキまくりの物語、男は度胸、女も度胸、ロマンティシズムらしきものはあるが、ロマンティシズムではないであろうニヒリズム、という感じだ。その行き着く先は・・・・・・。
帯に「これは前史なのか、あるいは現在の私たちなのか?」とあるが、まさに現在に重なる。おかしな方向へ向かう国、なんとかしなければという理想のある人々、金儲けしか頭にない輩、過酷な状況下のプロレタリアート。ではどうすればよいかという答えは簡単ではないが、侵略はなかった、日本軍は完全に悪、そんな両極端のどちらにもならずに考えるヒントにはなる。
Amazonでは何故か高値になっているが、楽天ブックスは在庫ありになっている(2019年9月16日現在)。
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